ストラスブール都市交通政策の根幹をなすのが、自動車に占有された都市空間を歩行者の手に取り戻すということです。そのためには、従来は入るに任せていた都心の自動車流を何らかの形で制御する必要があります。手っ取り早いのは、自動車進入禁止にしてしまうことです。観光客が多く、プチットフランスや大聖堂などの歴史遺産を抱える地区では自動車進入規制は最適な方法です。ただしいくら歩行者優先のまちづくりとは言えども、現代の社会や経済がクルマなしでは成り立たなくなっている以上は、都心部全域に進入規制をかけるわけにはいきません。進入規制をかけるのは、都心の一部に過ぎません。
そこで、ストラスブール都心では段階的な自動車制御を行っています。まず、通過交通はバイパスに誘導し、通過交通を排除します。これによって、都心には用事のあるクルマしか入れないようにします。次に、重要地区は進入禁止にします。のこる地区は、ブロックごとに一方通行道路を整備し、別のブロックへいくさいには、一旦外へ出ないといけないようにします。これにより、都心ではむやみに自動車交通量が増えることを抑制し、流入を防いでいるのです。
ということで、このページではストラスブールの自動車制御について、施設を中心に紹介してゆきます。
上図は、都心の道路の概況です。ストラスブールの都心はイル川の中之島になっており、川が自然の境界をなしています。都心は自動車進入禁止ゾーンで分断されており、通過交通は都心を通らず、川沿いの環状道路および郊外部のバイパスを通ることになります。都心の一部地域は自動車進入禁止ゾーンで、この入り口には浮沈式ボラートによる関所が設けられています。この地域に住む住民、およびこの地区で業務活動を行う場合は進入が認められます。つまり、住民や都心の事業者、タクシー運転手には市当局から、関所の鍵が渡されます。これら進入が許可された運転手のみが、ボラートのセンサーにかざすカードを与えられ、都心に入ることができます。
しかし、他の地区には格別の規制はかかっていません。他の地区は一方通行と歩行者ゾーン組み合わせによる誘導により、自動車交通流を裁いています。つまりストラスブールの都心の自動車対策は、制限でも規制でもなく、あくまで自動車制御なのです。では、どのような方法で制御しているのでしょうか?まず上図を見ていただければ、基本的に自動車進入できる地区は3つあり、それぞれは一旦外へ出ないと互いに行き来できないことがわかると思います。その上で、それぞれの地区の道路は一方通行規制がかかっています。市街地の細いとおりは一方通行規制をかけて、渋滞を防ぎ、その上で使いにくくすることにより用のあるクルマ以外は入らないようにしているわけです。また、それぞれの地区内には公共駐車場が存在しています。特に、Homme de Fer近くのクレベール広場とカテドラルに近いグーテンベルク広場の駐車場は地下方式にしています。結構大規模な駐車場を持っている事がわかります。つまりは、ストラスブールの都心はクルマで訪問出来るようになっているわけです。もちろん、都心の駐車場はそれなりに料金が高く、実質無料みたいなP&R駐車場の方がコストが安いわけで、経済的な誘導も行われている事がわかります。
目的別交通手段 | 都心中心 | 都心周辺 | 都心外縁 | 郊外 | |
ク ル マ |
住民・業務・公共車 | △ | ○ | ○ | ◎ |
外来客 | × | △ | ○ | ◎ | |
通過交通 | × | × | △ | ◎ | |
トラム(LRT) | △ | ○ | ◎ | ◎ | |
バス | × | ○ | ○ | ○ | |
歩行者 | ◎ | ◎ | ○ | ○ | |
自転車 | △ | ◎ | ◎ | ◎ |
ツイート | |2004年7月19日作成、2012年5月3日最終更新| |