ストラスブール・概要

 ストラスブールはフランス東部アルザス地方の中心都市で、人口25万人(都市圏人口45万人)、アルザス地方圏庁ならにバ・ラン県の県都となっています。ストラスブールとはドイツ語で街道の街であるシュトラスブルクが語源であり、ドイツ・スイスと接する国境地帯に位置する交通の要所であります。ストラスブールはヨーロッパの国際交通の要路であるライン川に接し、フランス最大の河川港を要しています。ストラスブールを含むアルザス地方は国境の重要な地域として常にフランス・ドイツ係争の地となり、たびたび帰属が変わってきたという歴史を持っています。アルザスはルイ14世の時代にフランスへの帰属が確定しましたが、普仏戦争敗北と第二帝政崩壊によりプロイセン=ドイツ領となり、第一次世界大戦後にフランスに再び帰属しました。ナチス=ドイツによるフランス支配時には一次的にドイツ領となりましたが、戦後はフランスに復帰し、欧州の交通の要所ということから欧州統合に関わる国際機関が数多く設置され、現在はヨーロッパにおける重要な国際行政都市の役割を担っています。ストラスブールはその他、フランスでも屈指の規模を誇る大学町であり、いくつかのグラン=ゼコール(高等公務員養成大学校)が設置されているなど学問の街という性格が濃くなっています。ストラスブールは歴史的経緯から元来ドイツ文化圏に属し、アルザス古来の言葉であるアルザス語はドイツ語の方言です。アルザスの片田舎では老人はフランス語はわからず、アルザス語で会話する地域もあるそうです。

・ストラスブールの国際機関
 ストラスブールに位置する国際機関のうち、代表的なのは欧州議会、欧州評議会、欧州人権裁判所の三つです。欧州議会とは、EU(欧州連合)の国会にあたり、加盟国の国民による直接選挙で選ばれた議員によって構成されています。欧州議会の役割は現状ではEU行政に対する諮問機関的な役割が強いですが、年々重要性が高まってきており、役割が強化されつつあります。欧州評議会はEUとは別にヨーロッパ統合に関して評議する機関であります。欧州人権裁判所は、欧州人権条約に基づいて設置された機関であり、加盟国で人権が侵害された人はこの裁判所で裁判を受けることができます。

・ストラスブールの大学・大学校
 ストラスブール大学はストラスブール市の人口の10%を超える学生数三万人を要する規模の大きな大学です。理系のルイ=パスツール大学、人文科学系のマルク=ブロック大学、社会科学系のロベール=シューマン大学の3つから構成され、フランス人学生だけでなく、各国からたくさんの留学生が集まる国際色が豊かな大学であります。フランスの教育制度で欠かすことができないのがグラン=ゼコール(高等公務員養成大学校)です。グラン=ゼコールの出身者は官僚社会のエリート養成校であり、ここの出身者は各省庁の重役官僚になります。いわばグラン=ゼコールはフランス学歴社会の頂点に立つ存在ですが、数あるグランゼコールの中で一番トップに立つE.N.A(国立行政学院)はストラスブールにあります。これらの学校の存在から、ストラスブールはフランスを代表する学研都市と言えるでしょう。

・ストラスブールの世界遺産
 ストラスブールはまた、観光都市としての性格も持っています。というのは、いくつも世界遺産を抱えているからです。ライン川支流のイル川の中之島にできたストラスブール旧市街には歴史的建造物が多くのこり、たくさんの観光客が訪れます。まずストラスブールのシンボルのカテドラル(ノートルダム大聖堂)は高さではフランスでもトップクラスで、大きさでもヨーロッパで五指に入る規模です。砂岩でできた赤茶色のゴシック式の聖堂、独特の一本だけの尖塔が天を突く外観を持ち、カテドラル周辺は常に観光客でにぎわっています。もう一つのシンボルと言えるのが、旧市街西部のプチット=フランス地区。ここにはドイツの影響を受けたアルザス独自の木組みの家が数多く残り、地区全体が世界遺産に指定されています。散策ルートとしてたくさんの観光客で常ににぎわっています。他に市街西部の近代美術館やイル川の水上バスによる周遊など、様々な観光スポットがあります。

・ストラスブールの地理的位置
 ストラスブールはあまり観光地として日本ではメジャーではありません。その理由は、やはりフランスの東の果てにあるせいで、フランスを訪れる場合はやっぱりパリから遠く、日本人観光客の足が向きにくいのでしょう。ただし、ストラスブールがはずれに見えるのはパリ中心に見た時であって、逆にストラスブール中心に地図を見てみればどうでしょうか?答えは以下の通り、まさにストラスブールはヨーロッパの真ん中です。丁度ドイツ南部やスイスと言った観光ルートに近く、ヨーロッパ周遊旅行では拠点となる位置にあると言えましょう。

 ご覧のように、パリよりもドイツ南部主要都市への方が近くなっています。パリよりもフランクフルトに近く、ストラスブールから一番近いヨーロッパのハブ空港はフランクフルト空港になります。鉄道のアクセスが便利で、ドイツ南部へのアクセスはおおむねよいです。フランクフルトまで2時間、シュツットガルトは2時間、ミュンヘンまで5時間です。ICEを使えば、ケルンへも3時間あまりで到着します。ベネルクスへも近く、ルクセンブルクへは2時間、ブリュッセルで5時間。スイスへも近く、北西のバーゼルまでは1時間20分、ベルンへは3時間弱、チューリヒまで2時間40分。フランス国内へは、まだTGVが通っていないせいでちょっと時間がかかり、パリで4時間、リヨン5時間。ストラスブールやアルザスを観光で訪れるなら、フランス旅行よりはドイツ南部やスイス北部、ベネルクス方面への旅行と絡めたほうが便利でしょう。  


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