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ストラスブールのトラム
車両紹介

Eurotram 1000系電車

 1994年の開業時から活躍してる電車です。斬新なデザインの100%低床車で、世界中にトラム復権と新時代到来を印象づけた、文字通り革命を起こした電車です。欧州議会所在地にちなんで、Eurotramの愛称を持ちます。車軸無しの特殊な動力機構を採用しており、床面フルフラット化を実現しています。また、大きな窓ガラスを持つ明るい電車であり、トラムの新しいデザインを世界に示した電車です。
 倒産してしまったイタリアのソシミが開発していたノンステップ技術を活かして、スイスのABB(ブラウンボベリー)社で開発された100%低床車です。第1次車はイギリスのヨーク工場で建造されました。その後、ABBはAEGと合併し、ADtranzとなり、2000年の2次車はADトランツ製となりました。2次車では、最終組み立ては地元で行うことになり、ストラスブール近郊に本社を持つロール社が担当しました。その後ADトランツは、ボンバルディアに売却され、現在はボンバルディア社のラインナップになっています。ボンバルディアのカタログにはストラスブールのEurotramが掲載されていますが、全車合併以前に製造されているため、ストラスブールの電車でボンバルディアの銘板をつけているものはありません。

 1000系の称号を持ち、1次車・2次車で番号が分かれています。1次車は26編成有り、1001〜1026の番号となっています。このグループは全て7連接33m車であり、ABB製です。2次車はADトランツに発注され、7連接33mと9連接43mの2種類があります。7連接車が1031〜1040、9連接車が1051〜1067の車番となっています。1次車と2次車の相違は、台車ユニットにある白いプロテクターカバーの通風口の形状が異なること(ただし、部品共用のため、1次車でも一部のカバーが2次車用のものになっているものもあります)、および内装の相違です(天井にある吊り手の形状が異なる。1次車では吊り手の支えが片方しかないL字形ですが、2次車では両方あるコの字形)。

 車両は、台車のあるユニットが台車のないユニットを挟むフローティング構造。運転台ユニットには客席はなく、中間のユニットだけに客室があります。台車のあるユニットは車長も短く、また小半径車輪と外側駆動式のモータとなっており、車内は4人掛けのロングシートとなり通路幅を確保しています。フローティングユニットは大きな窓ガラスが特徴で、巨大な片開きプラグ式ドアが特徴です。車内は、1-2掛けのボックスシート。ドア部分には補助いすもあります。車内はクリーム色と緑色の配色で、暖かみのあるデザインとなっています。
 7連接、9連接ともに1台車が付随台車となっています。パンタグラフのない中間台車ユニットが付随台車です(9連接では、パンタグラフ付きユニットと、真ん中のユニットが駆動台車)。パンタグラフは台車ユニットの一つにシングルアーム形のものが一基搭載されています。市内の軌道区間は架線が高く、また地下線では架線が天井すれすれに張られれているので、パンタグラフの稼働領域は広めです。
 車体の構造が特徴的です。車体の構体(ダークグリーンに塗装)に、窓枠・ドア枠側板(カッパーメタリックの部品)と側面プロテクター(白い部品、バンパーのようなもの)を取り付ける構造をしていますが、なんとマジックテープで取り付けています。

 開業以来12年間活躍してきた同車ですが、予想以上の乗客の伸びにより相当酷使されています。特に、A線の乗客増は凄まじく、時間帯によっては7連接車ですと積み残しが発生する状況です。また、あまりにもたくさんの乗客が乗ると乗客の圧力でプラグドアの不具合が生じることもしばしばあります。開業時から活躍する第1次車などは酷使によってかなりガタがきているものも少なくありません。9連接車は数が限られていることもあり、A線といえども全部を9連接車で賄うことが出来ない状況でした(通学時間帯を中心に、B/Cのラッシュ時にも9連接車が必要なので)。
 2000系Citadisの登場は、Eurotramの運用にも変化を与えました。2000系はすべて45mのロングボディーであり、また混雑対策を施した車両なので、混雑の激しいA線にはCitadisを集中投入し、捻出した1000系Eurotramを延伸区間用の車両に充当することになりました。第3次路線の開業は1年遅れる見込みですが、契約の関係で車両は2006年度に入ってどんどん納入されています。

 9連接の長い方の車両はCitadisと共通運用で乗客の多い路線に使われます。逆に、E線には7連接の車両が主力となっています。7連接の車両は、A線での運用は避けられている模様です。 多くの車両が予備車となっている現状ですが、第3フェーズの路線延伸後は車両がまた必要になってきます。酷使されて劣化している電車は予備車となっている今のうちに補修工事を行い、末永く活躍できることが望まれます。


【1000系Eurotram 諸元表】
7連接車 9連接車
車長 33.1m 43.0m
車幅 2,400mm
重量 40t 51t
床高さ 350mm
定員(座席数) 275(66) 370(92)
モーター数 12 16
編成出力 324kw 416kw
最高速度 60km/h
登坂性能 80‰
最小通過半径 25m

Citadis 2000系電車

 2006年より登場した第3次増備車両。フランス国産の車両を採用することになり、アルストムのCitadisが採用されました。名目上は2006年予定だった第3フェーズ路線の延伸開業用ですが、実際には混雑が深刻なA線用に導入されています。A線にこの2000系Citadisを投入し、捻出した1000系Eurotramを新設のEなどの延伸区間に投入する見込みです。延伸開業は1年遅れる見込みですが、建造の契約の関係で車両の方は2006年度に入って順次投入されています。A線の混雑は極めて深刻だったので、早いCitadis2000系の投入はそれだけでも役にたつものでした。
 Citadisと言えば、モジュール構造で顔以外は同じようになっているのが特徴であり、この2000系もボルドー用の100%低床車と基本的には同じ車両です。しかし、ストラスブールの場合は特殊な条件が必要なので、この2000系では特殊な仕様となっています。というのは、ストラスブールのLRTはカーブや施設の建築限界を、カーブでのオーバーハングのほとんど無いEurotramに合わせて設計しているため、BordeauxやLyonで使われている車両をそのまま運用することができないのです。ストラスブール仕様車では、先頭ユニットの台車位置を変更し、ストラスブールの曲線を通過できるように設計してあります。
 車体デザインはEurotramをベースにしていますが、Citadisの標準備品に合わせているところも多く、全体的にフラットな外観となっています。車内は朱色の座席が特徴的です。この電車では混雑対策に力点が置かれており、客室ドアは両開きとなって混雑緩和に役立っています(もっとも、これはCitadisの標準仕様ですが)。立ち席スペースも広めに取られています。全体的には、部品などはBordeauxの電車などと共通であり、台車配置・前面デザインと塗装以外は標準化されたCitadisと何ら変わりはありません。
 基本的に全線で使用されますが、乗客数の多いA線に投入されることが多いです。また、都心を迂回し乗客数のあまり多くないE線にはあまり運用されていないようです。


【2000系 Citadis 諸元表】
車長 45m
車幅 2,400mm
定員(座席数) 288(64)



参考資料
Georges MULLER "GENERATION TRAM", 2006, Oberlin
アルストム社ホームページ
ボンバルディア社車両カタログ


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2006年10月22日 ページ作成
2010年6月28日 更新

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